目の前に姿は見えてるのに、いないってわかるの。それが、本当の死なんだよ。
だから、映画を観ても泣けない。どんなに上手に死の演技をしたって、そこにいるんだもん。
湊かなえ『少女』
ただ、七生がここにいたっていう感覚を、ちょっとの間、リアルに残しておきたいだけ
耳が隠れる長さで切りそろえたおかっぱ頭を、私はほんとうに気に入ってしまった。
はじめは駅までの未知は途方なく遠くに感じて、私を安心させた。
だけど、どうがんばってもいつもと同じように十分ほど歩いたら駅が見えてきた。それが悲しくて、私は涙をこらえることができなかった。
「元通りになるだけだよ」七生はいったけど、それは違う。もとどおりになるものなど、この世にはひとつもない。
記憶はこの先薄れていくだろうけど、その時感じた感覚はずっと私の中に根をおろしていく。七生の存在しか知らなかった一年前の私には、戻れるわけがない。それは、とても幸せなことで、とても切ないことだ。
瀬尾まいこ『7's blood』
網野智世子
だから、映画を観ても泣けない。どんなに上手に死の演技をしたって、そこにいるんだもん。
湊かなえ『少女』
ただ、七生がここにいたっていう感覚を、ちょっとの間、リアルに残しておきたいだけ
耳が隠れる長さで切りそろえたおかっぱ頭を、私はほんとうに気に入ってしまった。
はじめは駅までの未知は途方なく遠くに感じて、私を安心させた。
だけど、どうがんばってもいつもと同じように十分ほど歩いたら駅が見えてきた。それが悲しくて、私は涙をこらえることができなかった。
「元通りになるだけだよ」七生はいったけど、それは違う。もとどおりになるものなど、この世にはひとつもない。
記憶はこの先薄れていくだろうけど、その時感じた感覚はずっと私の中に根をおろしていく。七生の存在しか知らなかった一年前の私には、戻れるわけがない。それは、とても幸せなことで、とても切ないことだ。
瀬尾まいこ『7's blood』
網野智世子
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