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目の前に姿は見えてるのに、いないってわかるの。それが、本当の死なんだよ。
だから、映画を観ても泣けない。どんなに上手に死の演技をしたって、そこにいるんだもん。

湊かなえ『少女』

ただ、七生がここにいたっていう感覚を、ちょっとの間、リアルに残しておきたいだけ

耳が隠れる長さで切りそろえたおかっぱ頭を、私はほんとうに気に入ってしまった。

はじめは駅までの未知は途方なく遠くに感じて、私を安心させた。
だけど、どうがんばってもいつもと同じように十分ほど歩いたら駅が見えてきた。それが悲しくて、私は涙をこらえることができなかった。
「元通りになるだけだよ」七生はいったけど、それは違う。もとどおりになるものなど、この世にはひとつもない。

記憶はこの先薄れていくだろうけど、その時感じた感覚はずっと私の中に根をおろしていく。七生の存在しか知らなかった一年前の私には、戻れるわけがない。それは、とても幸せなことで、とても切ないことだ。

 瀬尾まいこ『7's blood』
網野智世子
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森絵都さんの【永遠の出口】から。

千佐堵は正しい。立派で、尊敬に値する。けれどもどこかが決定的にずれている。私はその日、千佐堵に顔を上げろと言われるたびにそのずれはなんなのか考えた。
 それでも私は家庭と同様、学校でもなんとか折り合いをつけていくつもりでいたのだ。多少のズレには目をつぶり、千佐堵の発言にうなずいて、みんなが笑ったら声をあわせて。時折自分の中でもぞもぞとうごめく何かを殺せば、それはそれでうまくやっていけるものと思っていた。うまくやっていくしかないのだ、と。

人が自らの意思でできるのは<人生ゲーム>でルーレットをまわす程度の選択にすぎないのかもしれない、と思うようになったのは、もっと後になってからのことだ。

網野智世子 評価

千佐堵はまっすぐこちらを見据えているけれど、私にはこのとき、彼女が目の前にいるわたしではなく、その背後にいる大勢に語りかけている気がした。千佐堵の言葉はいつもそうだ。そこに私しかいなくても、つねに見えない大多数へ発せられている気がする。

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